乾燥を始めてから約1ヶ月。見た目はかなり順調に見えます。
熟成加工肉の難しさは、結果が出るまでに時間がかかることです。反省や修正が何ヶ月も後になるのでなかなか良いものができません。だから熟成加工肉の歴史が長いヨーロッパのハムやサラミは美味しいんですね。羨ましい〜
2015.2.8. 3660g
熟成や発酵は僕のライフワークになってるので、身の回りにある腐りかけの食べ物が気になります。よく観察してみると、僕たちの身近にいつの間にか発酵してるものがあるようです。
例えばいちご大福。僕はいちご大福が大好きなのでよく食べますが、時々大福の中のいちごが”シュワシュワ”してる事があります。これは発酵によってガスが発生したからだと思われます。いちごを常温で放置して熟成を待ってもこういった事にはなりませんが、大福の中のいちごは2、3日放置するとガスが発生します。おそらくあんこの影響を受けて発酵が促されるためだと考えられます。そして、この”シュワシュワ”したいちご大福、メチャ美味いんです!
いちご大福を購入する時、基本的には「当日中にお召し上がりください。」と書いてますが、ぜひ常温で2、3日放置してから食べてみてください。美味しいんです。
他にもサングリアを冷蔵庫の中でしばらく置きっ放しにしておくと、漬けこんでるフルーツにも同じ現象が起こります。そして当然このフルーツも激ウマ!
みなさんも試してみてください。
※私は科学者ではなく、この文章にもなんの裏付けもありません。単に私の予想です。なお、これらのいちご大福やサングリアを召し上がって体調が悪くなられてもいっさいの責任を負いかねます。
某大学のお客さんとしてミャンマー人の方達がいらっしゃった時、その方達の滞在期間中のお弁当を作らせて頂きました。
僕は海外のレストランで仕事してたこともありますが、おそらくミャンマーの方に料理を作るのは初めてです。会ったこともありません。
日本のパスポートはとっても優秀で、たくさんの国々に観光目的で簡単に渡航できますが、ミャンマーの人達は基本的にはビザの申請が必要で、しかも許可が出にくいようです。という訳で今回いらっしゃった人達も海外初の人達がほとんどでした。だからミャンマーの人達になかなか出会えないんですねー。日本人は恵まれた環境にあることを感謝しないといけないですね。だから、パスポートを盗まれないように気を付けましょう!
話は戻りますが、ぼくが言いたい事は、ミャンマーの人達の期待にお 弁当で答えるのは難しそうだと言う事です。
Wikipediaで調べると、ミャンマーの人達はチョー米食文化で、麺類も大好き。アヒと呼ばれるカレー炒め的な食べ物や和え物を日常的に食べてるみたいです。日本と違い水道水が飲めない国だと思われるので、おそらく生野菜なども食べないでしょう。
これらの情報と日々の皆さんの食べ方を元に、メニューを組み立てました。初日と最終日の写真を撮り忘れましたので、撮った分だけ載せます。
上の弁当はチキンのアヒ、ホウレン草のおひたし、春雨の和え物、自家製のシャルキュトリー、などです。初日(初日の写真はありません)の反応を伺うと、全員、先ず麺類に手が伸びたそうです。予想通りの麺好き!あと、大根の煮物は、箸でツンツン突いて不思議がってた様子。大根は無いんですかね?とにかく面白いリアクションです。
上の弁当に関しては、意外にもハムに手をつけない人が半分くらい居たそうです。ハム類は世界中の人達に愛されてる食べ物だと思ってましたが、例外もあるんですね。
上のお弁当は3日目の物です。メインに照り焼きチキン。副菜に、海老のソース焼きそば、山芋のピクルス、ホタルイカ、きんぴらゴボウ、シラスのふりかけ。この日はかなりジャパニーズな感じで攻めてみました。基本的に外国人には不人気な、オクラや山芋のなどのネバネバ系、シラスやホタルイカのようなありのままの姿のシーフードをいれてみましたが、山芋とホタルイカは完食。シラスもお一人残されただけでした。ホント意外です。
お次は主菜に海老のグリーンカレー炒め。副菜に鶏肉とチンゲン菜の中華風、蕎麦にオクラ ネギ 生姜 のタルタル。などです。海老は皆さん大好物のようで、毎日でも食べたいらしいです。
次は主菜に,eight hillsの人気商品 ケイジャンチキンの手羽元バージョン。副菜に冷奴、牡蠣の塩焼きそばなどです。東南アジアの人達は、通常 豆腐は炒めたり 揚げたりするので、リアクションが楽しみ。普段 魚は淡水魚を食べるらしく、海の魚は苦手で生臭く感じるそうです。日本人が持ってる感覚と逆ですね。
これはペスカテリアンバージョンの物です。写真は載せてませんでしたが、お一人ペスカテリアンの方がおられたので、毎日一つだけシーフードメインの物を作ってました。
eight hills delicatessen で生ハムやサラミを作ります。
欲を言えばしっかり温度と湿度管理ができる肉専用の熟成庫が欲しいのですが、小さい物でもSUVの新車が買えるほどの値段なので、当店のような小さなデリカテッセンでは、なかなか現実的ではありません。なので、比較的購入しやすいワインセラーで代用します。高価な熟成庫もワインセラーも基本的には温度変化が少なく高湿度の地下室のような環境を目指した物なので、イケると判断しました。
コンプレッサー式の大型ワインセラーです。これでも当店としては大きな買い物です。
次に、湿度管理ができないワインセラーの弱点を克服するための武器が加湿器です。
庫内の温度を上げないように超音波式のものにし、電源の問題は超強力 バッテリーで補います。これで、湿度90%を狙います。
伝導熱(熱伝導)とは静止した物体中に、または物体と物体の間に温度差がある場合、高温側から低温側に伝わる熱の事をいいます。
調理法として具体的にいうと、「ソテー」「炒める」「煎る」などです。
例えば、フライパンでステーキを焼くのは、伝導熱を利用した調理法です。
上の図はステーキをソテーしているイメージです。
フライパンに接してる面に直接熱が伝わりステーキが加熱されます。
ちなみに食材に外部から伝わった熱は、食材の内部に向かって熱伝導していきます。
下の図はジャガイモを茹でてるイメージです。
茹でる事によって対流熱でジャガイモに熱が伝わりますが、ジャガイモ内部では伝導熱によって外側から内側に熱が伝わっていきます。
伝導熱を利用した調理法はとってもシンプルで、世界で一番頻度の高いポピュラーな調理法だと思います。
※僕は科学者ではなく、この文章も自身の経験によるところが多いので、多々間違いがあるかと思われます。ご理解頂ければ幸いです。
2012年の冬から挑戦し続けてるサラミプロジェクト。
僕が使ってる熟成庫では湿度の調整ができないので、十分な熟成期間をむかえる前にカチカチに干からびてしまってなかなかうまくいきません。
だから今回は、微生物の力を借りて熟成と発酵を早める実験をしてみます。
前回同様ミンチにした豚肉と背脂に塩とスパイスを加え、粘りがでるまで良く混ぜ、ケーシングします。
下の写真は1週間乾燥させてから、温度を上げて1ヶ月熟成させた状態です。
程よく水分が抜けて状態も良く断面もキレイで、風味も熟成肉独特のナッツの香り、順調に熟成がすすんでます。
ですが、塩にうま味が負けてるような感じで、うま味が十分ではありません。
うま味を増やすということは、肉のタンパク質を分解して、アミノ酸に変えるということです。
肉の中に既に居る微生物でも熟成しますが、それだけでは不十分なので、外からも微生物を付着させ、熟成そして発酵をより促進させる工夫が必要です。
熟成庫内に白カビ系のチーズをおいてみました。この状態でしばらく様子をみて、変化が無いようなら次の手段を考えます。
Dry Aged Beef(ドライ エイジド ビーフ)とは、乾燥熟成させた牛肉のことで、普通に熟成させた牛肉とはちょっと、いや、かなり違います。
通常牛肉の熟成期間は、と畜後5日〜10日前後といわれてます。
動物は死ぬと死後硬直するので、熟成によって肉が柔らかくなるのを待つ必要があります。
熟成期間は肉の色や質によってかなりの違いがあり、鶏肉や豚肉などの白肉は熟成期間が短く、牛肉や鹿肉などの赤肉や黒肉は、熟成期間が長くなります。
ドライ エイジド ビーフは、温度、湿度、風の流れ、そして熟成に必要な菌がしっかり管理された熟成庫の中で、20日〜3ヶ月以上も熟成されます。
もちろん肉の表面は黒くなり、カビも付いたりするので、見た目はあまりいいもんじゃありません。
しかも乾燥熟成で大量に水分を失った上、調理する前にはトリミングする必要があるので、歩留まりが悪く、どうしても高価な物になってしまいます。
このTボーンステーキはシアトルの高級精肉店「Rain Shadow」のドライ エイジド ビーフです。
もちろんミディアムレアに仕上げたいので、調理には細心の注意が必要です。
まず常温にしばらく置いてから強めに塩胡椒して、グリルする場合は肉の表面にオイルをぬり、熱伝導がスムーズになるようにします。
常温にしばらく置く理由は調理時間をできるだけ短くするためです。中心温度を40℃くらいにしたいので、火にのせる前にその温度にできるだけ近づけます。
つまり、もう加熱調理は始まってるんです。
火の入れ方のコツは、高温で肉の表面を焼き固め、美味しそうな色に仕上げます。
このステーキくらいの厚さだと表面に色がついた状態でも中心はまだ冷たいので、低温のオーブンに入れたり、下の写真のように温かい所で休ませてゆっくり火を入れていきます。
また少し火の上にのせたり、休ませたりしてゆっくりゆっくり火を入れていきます。
美味しいものを食べるためには手間を惜しんではダメです。
十分休ませてあるので、カットしても肉汁があまり出ません。
アメリカの牛肉は、さほどサシも入ってないので本来、和牛肉ほど柔らかくはないのですが、ドライ エイジド ビーフは長時間の熟成によってかなりテンダーになってます。
しかも乾燥させてるのにとってもジューシー!
微生物や酵素が時間をかけて、たんぱく質をアミノ酸に分解してるので、強い旨味と奥深いフレーバーがあり、一度食べると忘れられない美味しさです。
日本は明治維新以降に食肉が始まったので、食肉の歴史が浅く、しかも魚の刺身を愛する日本人は「新鮮さ」を大切にするので、肉を熟成させるという発想がなかなか出てきません。
しかし、醤油や味噌、納豆や、僕の地元の高級食材 鮒ずしなど、日本人は元々、発酵や熟成のテクニックを持ってるので、和牛によるドライ エイジド ビーフの開発をもっと積極的に行い、神戸ビーフを超える、世界を驚かせる和牛を生み出せると思います。