Dry Aged Beef(ドライ エイジド ビーフ)とは、乾燥熟成させた牛肉のことで、普通に熟成させた牛肉とはちょっと、いや、かなり違います。
通常牛肉の熟成期間は、と畜後5日〜10日前後といわれてます。
動物は死ぬと死後硬直するので、熟成によって肉が柔らかくなるのを待つ必要があります。
熟成期間は肉の色や質によってかなりの違いがあり、鶏肉や豚肉などの白肉は熟成期間が短く、牛肉や鹿肉などの赤肉や黒肉は、熟成期間が長くなります。

ドライ エイジド ビーフは、温度、湿度、風の流れ、そして熟成に必要な菌がしっかり管理された熟成庫の中で、20日〜3ヶ月以上も熟成されます。
もちろん肉の表面は黒くなり、カビも付いたりするので、見た目はあまりいいもんじゃありません。
しかも乾燥熟成で大量に水分を失った上、調理する前にはトリミングする必要があるので、歩留まりが悪く、どうしても高価な物になってしまいます。

dry aged beef

このTボーンステーキはシアトルの高級精肉店「Rain Shadow」のドライ エイジド ビーフです。
もちろんミディアムレアに仕上げたいので、調理には細心の注意が必要です。
まず常温にしばらく置いてから強めに塩胡椒して、グリルする場合は肉の表面にオイルをぬり、熱伝導がスムーズになるようにします。
常温にしばらく置く理由は調理時間をできるだけ短くするためです。中心温度を40℃くらいにしたいので、火にのせる前にその温度にできるだけ近づけます。
つまり、もう加熱調理は始まってるんです。

dry aged beef grill

火の入れ方のコツは、高温で肉の表面を焼き固め、美味しそうな色に仕上げます。
このステーキくらいの厚さだと表面に色がついた状態でも中心はまだ冷たいので、低温のオーブンに入れたり、下の写真のように温かい所で休ませてゆっくり火を入れていきます。

rest

また少し火の上にのせたり、休ませたりしてゆっくりゆっくり火を入れていきます。
美味しいものを食べるためには手間を惜しんではダメです。

ミディアムレア

十分休ませてあるので、カットしても肉汁があまり出ません。

アメリカの牛肉は、さほどサシも入ってないので本来、和牛肉ほど柔らかくはないのですが、ドライ エイジド ビーフは長時間の熟成によってかなりテンダーになってます。
しかも乾燥させてるのにとってもジューシー!
微生物や酵素が時間をかけて、たんぱく質をアミノ酸に分解してるので、強い旨味と奥深いフレーバーがあり、一度食べると忘れられない美味しさです。

日本は明治維新以降に食肉が始まったので、食肉の歴史が浅く、しかも魚の刺身を愛する日本人は「新鮮さ」を大切にするので、肉を熟成させるという発想がなかなか出てきません。
しかし、醤油や味噌、納豆や、僕の地元の高級食材 鮒ずしなど、日本人は元々、発酵や熟成のテクニックを持ってるので、和牛によるドライ エイジド ビーフの開発をもっと積極的に行い、神戸ビーフを超える、世界を驚かせる和牛を生み出せると思います。