西村料理研究所の簡単調理理論! 味覚のメカニズム

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味のメカニズムはとても複雑で、昔からたくさんの人達が研究を続けていますが未だに解明されていないことがたくさんあります。

●基本味
基本的な味覚は5つあるとされていて、「甘み」「酸味」「塩味」「苦味」「うま味」の五つを五基本味と言います。

私の解釈では、五基本味は舌にある味蕾のみで感じることのできる味覚です。

鼻をつまんだ状態で味見してみるとよくわかります。

五基本味の中でも、「甘み」「酸味」「塩味」はとてもわかり易い味覚で、鼻をつまんだ状態でも簡単に見分けることができますが、「苦味」と「うま味」は少し複雑です。

人は味わう時、舌と同様に鼻がとっても重要です。風邪で鼻が効かない時は、何を食べてるかわからなくなるくらいです。

味蕾に「苦味」と「うま味」を感じる感覚はあるみたいですが、「甘み」「酸味」「塩味」に比べると、かなり少ないように感じます。
例えば苦い薬を飲む時、鼻をつまんで飲んだりしますし、弱い「うま味」の場合、鼻をつまむとあまり感じません。
つまり、「苦味」と「うま味」は鼻を使わないと感じにくいと言う事です。「苦味」と「うま味」は「風味」に半分足を突っ込んでる感じだと思います。

ここで少しうま味について、説明します。

うま味には代表的なものが三つあります。アミノ酸系の「グルタミン酸」と、核酸系の「イノシン酸」「グアニル酸」の3種類です。
実は私達日本人の愛する「出汁」もこの3種類で構成されています。

*昆布出汁→グルタミン酸

*鰹出汁→イノシン酸

*椎茸の出汁→グアニル酸

特にアミノ酸系の出汁と核酸系の出汁を合わせるとかなりの相乗効果があり、うま味は十数倍にも感じます。いわゆる「味の相乗効果」です。

味の相乗効果が科学的に解明される以前から、人々はそれを実践してきました。
日本では昆布と鰹の合わせ出汁。フランスでは鶏ガラや肉、香味野菜やキノコなどを長時間煮込んだ「フォンドヴォライユ」などです。

世界中で、伝統的に残ってる食べ物は、ほとんど例外なく、この美味しさの法則に従ってると思います。昔の人達ってスゴイですね。

うま味成分は他にも、貝類から出る「コハク酸」(アルコール発酵の副産物としても得られる)や、甲殻類に含まれる「グリシン」「アルギニン」。何に含まれてるかよくわかりませんが、「アスパラギン酸」など、旨味成分はとっても複雑です。

僕の感覚ですが味蕾には、グルタミン酸を感じる感覚はあるようですが、イノシン酸やグアニル酸を感じる感覚がないように感じます。

このように「うま味」はとっても複雑で、「甘み」「酸味」「塩味」との相乗効果もあると思われるので、単純に五基本味の一つと考える訳にはいきません。

「苦味」もとっても複雑で、「渋味」や「刺激味」「えぐ味」とも関係があり、赤ワインのタンニンや、コーヒーの焙煎から産まれる複雑な苦味など、何が苦味かハッキリ説明がつきません。

基本味と言いながら、人はまだ、基本的な味の感覚さえまだ解明できてないと言えます。

また鼻以外にも、喉、視覚、記憶、温度、食感(触感)、痛覚などが大きく味に関わってきます。これらを「感覚味」と呼ぶのが相応しいと思われます。

●風味
私の解釈では、風味とは、鼻と舌の両方を使って感じることのできる味や香りの事です。

基本味に続いて感じることのできる「風味」で僕が思いつくのは、「えぐ味」「渋味」「アルコール味」「発酵味」「ハーブ&スパイス味」「スモーク味」「アルカリ金属味」などです。おそらくもっとあると思われます。思いつく度に書き加える予定です。

風味や感覚味は基本味以上に複雑で、たくさんの味覚が入り混じっていると言えます。

例えば、後に書いてる「刺激味」なんかは、ほとんどの味覚と関わっています。
酸味は明らかに刺激があります。
塩味でさえです。日本では塩味の強い物を食べると、「塩辛い」と言いますよね。これは強い塩による刺激味(辛味(痛覚))であると思います。

*えぐ味:アクの強い野菜などを食べた時に感じる風味で、苦味との区別がつきにくい。刺激味でもある。

*渋味:熟れてないフルーツなどを食べた時に感じる風味で、これも苦味やえぐ味、酸味との区別がつきにくい。刺激味でもある。

*アルコール味:アルコールは発酵食品であり、ドラッグ(日本では合法)でもあるのでかなり複雑です。
アルコールにはコハク酸などのうま味成分もありますし、原料によって、甘味、酸味、苦味などが絡み合ってます。

口に含んだ瞬間には、まず基本味と刺激味を感じ、内鼻腔から喉へと移動するにしたがって違う香りや刺激を感じます。
強いアルコールの場合、食道や胃袋の形が感覚としてわかるほどの刺激を感じます。
他の食べ物との味の相乗効果も大きく、ソムリエという職業があるほど奥の深い味覚。
極め付けは酔っ払うというスペシャルな特典付き。
大昔から人類を虜にしてきた超特別な味覚の一つ。

*発酵味:発酵のメカニズムはまたとっても複雑で、それだけで本一冊書けるほどです。
ここでは、風味に関してだけ書きます。

アルコールを含め、発酵食品や良く熟成された肉類を食べた時に感じる味覚で、味噌や醤油、チーズやヨーグルト、パンなど、発酵や熟成によってうま味や香りが生まれ、これも説明が難しい独特の味覚になります。
アルコール同様、鼻の奥で感じる感覚です。
発酵食品は上手く発酵できたものと、そうでないものの差が歴然なので、発酵に失敗したものと食べ比べると発酵味の奥深さがわかります。

*ハーブ&スパイス味:ハーブとスパイスにはそれぞれかなりの個性があり、何をもってハーブ&スパイス味とするかは決めることができませんが、オンリーワンな香りを持つ物もたくさんあり、味覚の幅を大きく広げる大切な食材達です。

*スモーク味:食材を加熱(★メイラード反応)したり燻製することによって生まれる風味。
かなり食欲をかきたてる風味で、内鼻腔付近で強く感じられる。
茹でた肉と焼肉を食べ比べたり、蒸した芋とポテトフライを食べ比べたりすると、風味の正体がわかりやすい。

*アルカリ金属味:残念ながら私が考えるアルカリ金属味は決して美味しいものではありません。
例えば、コントレックスや海洋深層水などの硬度のかなり高い硬水をのむと感じるあの独特の風味です。、
特に日本は軟水の国で、しかも人は弱酸性のものを美味しく感じるので、アルカリ金属味は料理に不必要なものかと思われます。

●感覚味
感覚味は私が考えた言葉なので科学的には何の根拠もありませんが、ご理解頂ければ幸いです。

私が考える感覚味とは、「辛味(痛覚)」「刺激味」「食感(触感)」「温度」「視覚」「記憶」などが味覚に関係している場合を意味します。
これも風味同様、まだたくさんあると思われるので、思い付く度に書き加える予定です。

*辛味(痛覚):口の中や喉の痛覚を刺激し、味覚の幅を広げます。
五基本味と同じく、鼻をつまんだ状態でも感じる事ができますが、痛みを感じてるのであって、味を感じてるのではないので、基本味には入らないのだと思います。
また、「刺激味」の一つであるとも考えられます。
唐辛子や山葵、マスタード、生姜などがわかりやすい食材の例になります。

*刺激味:上でも書きましたが、刺激味の範囲はかなり広く、ほとんどの味覚と関係してると思われます。
炭酸ガスも刺激味の一つです。

*食感(触感):「かたい」「やわらかい」「粗い」「なめらか」など、物理的な感覚。
味覚とは関係がないような気がしますが、実はおおいにありです。
クランキーチョコレートの人気の理由はここにあります。

*温度:「熱い」「温かい」「ぬるい」「冷たい」などの物理的な感覚。
熱い料理や冷たい料理。または、フォンダンショコラにバニラアイスを添えて温度差を演出したり、温度も味覚に大きな影響を与えます。

*視覚と記憶:視覚と記憶は連動していて、人は見る事により、何を食べようとしているか認識し、過去に食べたことのある経験(記憶)を元に、「美味しそう」とか「マズそう」とか予想します。
そしてその予想を上回ると美味しく感じ、下回るとマズく感じます。

昔「探偵ナイトスクープ」で、緑色(つまりメロン味)のカキ氷を見ながらイチゴ味のカキ氷を食べると、メロン味に感じるというのを見た事があります。
もちろんかき氷のシロップは、色が違っても味があまり変わらないというのがありますが、人は味覚において、視覚と記憶が大きく関わってくるということです。
これは、実際僕も試してみたので、間違いありません。
他にも、暗過ぎるレストランや、ブラックライトの近くで料理を食べると、何を食べてるかわからなくなり、不味く感じます。

味覚のメカニズムについて深く考え出すと、料理が楽しくなくなる可能性がありますが、プロの料理人達はある程度意識して、調理法や食材と向き合うべきかと思われます。

★メイラード(カルボニル)反応

※僕は科学者ではなく、この文章も僕自身の経験によるところが多いので、多々間違いがあるかと思われます。ご理解頂ければ幸いです。

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